実験線の最大斜度は東海道新幹線の倍
時速500キロメートルで地上を走るのは確かに猛烈に速い。ただしほとんどの間がトンネルなので、いまいち実感しにくい。ごくたまに外の景色が見えるけれど、一瞬でまたトンネルに戻ってしまうので、何が見えているのか確かめるヒマもない。
とはいえ、飛行機の離着陸のときや、新幹線の最高速のときの速さとは明らかに段違いだ。
車内の内装も、新幹線や飛行機に似ている。できるだけ軽量化するために、カーボンファイバーなどのプラスチックを多用しているからだ。なお実験線であるためか、あまりゴージャスな感じはしなかった。車内の居住環境の改善はこれから注力するそうだ。
リニアは音もなくスルスル走るのかと思っていたら、けっこうゴオーッと音がする。飛行機や新幹線で聞くのと同じだ。
この音は風を切る音だという。飛行機はジェットエンジンの音が大きく、新幹線はレールをガタゴトとする音が大きいかと何となく思っていたが、どちらも実は風を切る音が大きい、というのが実際のところのようだ。
また振動についてはピタッと揺れないのかな、と何となく思っていたが、そうでもなく、予想したよりはブルブルと左右に揺れた。これは側面のコイルの施工などにわずかな誤差があるためとのこと。このあたりは、新幹線のレールと同じようだ。ただし揺れるといっても、乗り心地が悪いほどではなく、車内は新幹線に比べても快適だ。
乗ってみて印象的だったのは、加減速の強さだった。
新幹線のゆっくりした加減速のイメージとだいぶ異なる。座っていると背中を押し付けられるような感じがするし、立ってみるとこんどは体が傾く。JR東海の方に聞いて見ると、加速度は0.1Gということで、筆者の場合、立っていると身体が10分の1ぐらい傾くくらいの感覚だった。この加速度は既存の鉄道の最大値を超えないようにしているとのことだった。
身体が斜めになると感じたのは、強い加速のためだけではなく、けっこう急な斜面を上り下りしていたこともある。リニア実験線の最大斜度は40パーミル、つまり4パーセントに達する。100メートル進むごとに4メートル登るということだ。これは、東海道新幹線では最大でも2パーセントだから、その倍もある。