企業買収で知財部門を強化
① 知財部門の役割の変化
同社では、ビジネスモデル転換のために大型買収を繰り返し行った。21年に約1兆円をかけて買収したアメリカのIT企業・グローバルロジックや、20年に買収したスイスの重電大手ABBの送配電事業部門・ABBパワーグリッド(現・日立エナジー)などがその例だ。
いずれも買収先の事業を切り出して自社に吸収するのではなく、企業そのものを買収している。買収先の企業が持つ知財、顧客と生み出される価値、発明的なアイデアなどの知的資本に関する考え方を自社と融合させることが狙いだ。相乗効果が期待でき、企業価値の向上にもつながる。
こうした企業買収により、同社知財部門の役割は大きく変化していった。
また「Lumada」を活用したビジネスで顧客と課題解決をしていく際にも、多くの知的資本が生み出されるようになった。こうしたアイデアやノウハウには、発明性のある知的資本が含まれる。マスカスタマイゼーションを進めるためには、これらを可視化し、権利化する必要がある。同社の知財部門は、顧客と接点を持つ部門をサポートしながら、発明性のある、自社と顧客のアイデアの整理、可視化も担うようになった。
さらに顧客との意思決定の構造や、社会課題、経営課題、業務課題など各レベルでの活動の過程と成果までも、同社では知財部門も参画して収集、整理している。いずれも今後のビジネスで活用されるデータとして集積されている。