課題発見→解決案創生→価値検証、顧客との協創活動

② 顧客接点の変革

 ビジネスモデルの転換により、同社では顧客との接点を大きく変革した。「Lumada Innovation Hub Tokyo」という拠点を設け、顧客とのワークショップやディスカッションを通じて、顧客の課題を俯瞰的に捉え、体系的な整理を行うようにしたのだ。顧客との協創活動を推進するための知識やツールの整備も併せて行い、顧客理解を深められるよう仕組みも整えた。

 現在、同社では独自の方法論「NEXPERIENCE」(ネクスペリエンス)を展開し、「Lumada」事業で数百件のグローバルな成果を出している。「NEXPERIENCE」は顧客と共に価値を生み出すための方法論で、大きく3ステップで構成されている。

 ステップ1は「課題発見」だ。顧客の行動や環境を観察するエスノグラフィ調査に基づき、リアルな実態把握を行い、社会や集団の問題発生メカニズムを解明し、課題を発見し解決につなげる。課題発見は将来に対しても行われ、社会の潮流をよみ、それに基づく将来の課題、おこるかもしれない様々な未来のシナリオを考え、そこから将来の事業機会を発見していく。

 ステップ2は「解決案創生」だ。顧客が抱える課題と価値を明らかにし、どのような価値を創造するべきなのかを明確にする。そこに世界中の同社の技術や知見を結び付け、解決につながるサービスのアイデアを創出する。さらに複数のステークホルダーの関係性を可視化し、解決時の社会的価値や各ステークホルダーの価値を検証し、事業構造を検討することにより、ビジネスモデルを設計していく。

 ステップ3として、「価値検証」をする。解決時の顧客にとっての価値、ビジネスモデルを構成する各ステークホルダーの価値を検証した上で経営効果を見極め、事業性評価を行うのだ。現場の課題に対してどのサービスがどのような価値をもたらすのか、現場のデータを用いて事業価値のシミュレーションも行う。

 このように3つのステップを経て顧客と価値を生み出し、それらを雛形化、定型化することで、マスカスタマイゼーションによる横展開を常に進めている。