国会事務所が取材制限したにもかかわらず、ハニが国会本館に到着するやいなやファンや取材陣、国会職員まで国会入口に殺到し、さらには国会議員たちもハニを一目見ようとカメラを持って右往左往した。

10月15日、国政監査に出席するため国会に到着したNewJeansのメンバー・ハニ。彼女の背後にカメラを構えた夥しい人々の集団が見える(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 某国会議員は自身の国政監査場を抜け出してハニの控室に訪問する熱意を見せ、同僚議員たちからひんしゅくを買った。環境労働委員会のアン・ホヨン委員長は、自分の個人YouTubeアカウントでハニの出席映像を流し、莫大な広報効果を得た。

自撮りのふりしてハニを“盗撮”

 今年一年間、元請けと下請けの事業場で計5人の労働者が死亡したことで国会に呼ばれたハンファオーシャンのチョン・インソプ巨済事業所社長は、自撮りをするふりをして自分の後ろの席に座っているハニを撮影したことで、国民とメディアの厳しい非難にさらされた。これに対しハンファオーシャン側は「国民と遺族たちに深く謝罪申し上げる」という謝罪文を発表し、頭を下げなければならなかった。

 ハニの国政監査出席が正しいのかという議論もあった。環境労働委員会側は「労働法で保護されない労働者の現実を扱うため」ハニを参考人として採択したと述べたが、「事実確認がまだ済んでいない事件をあえて国会で扱うべきか」という批判は少なくない。また韓国社会の上位0.1%に該当するほど富裕で有名な人気アイドルが、果たして劣悪な環境で人権を侵害されている労働者を代弁できるかという代表性問題も提起された。

 何よりこの日の環境労働委員会では、5人の死亡者が発生した造船所の重大災害問題が扱われる予定だったが、ハニにだけ耳目が集中し、世論喚起が必要な深刻な労働人権問題が置き去りにされたという批判もあった。

 HYBEに対する非難も少なくなかった。国会議員たちは異口同音にHYBEを糾弾し、HYBEの「雇用に関する優良企業」選定を取り消さなければならないという主張も出てきた。政府の雇用労働棒によって「雇用に関する優良企業」に選定されれば、関税調査・地方税税務調査の猶予や、信用評価優待などの恩恵が与えられるが、社会的物議をかもしているHYBEがこのような恩恵を享受する権利があるかという主張だ。

 また、2022年にHYBEが職員の過労死を隠蔽したという疑惑も新たに提起され、国会から関連資料の提出を要請された。今月24日には、キム・テホHYBE最高執行責任者(COO)兼BELIFT LAB代表も、「文化体育委員会」の国政監査の証人として国会に出席する予定だ。この席では、ミン・ヒジン氏が主張してきたNewJeansとILLITとの盗作疑惑が取り上げられる見通しだ。すでにミン氏は「ILLITが企画段階からNewJeansの企画案を受け取り盗作した」という内部情報を法廷に提出した経緯がある。

“韓国最高のエンターテインメント企業”のお家騒動は、法廷を飛び越え、いまや国会をも巻き込む「壮大な泥仕合」となった。