『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第39回「とだえぬ絆」では、藤原道長の娘で中宮の彰子が2人目の皇子を出産。道長は「自分の孫を天皇にしたい」と望むようになり……。『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
彰子に2人も皇子が誕生して願ったり叶ったりの道長だが…
自分が抱える悩みについて、一番分かってくれそうな人に笑い飛ばされてしまうと、孤独感は深くなり、疑心暗鬼になりやすい。一人で何とかせねばと暴走しやすいのも、そんな時である。
NHK大河ドラマ『光る君へ』での藤原道長もまた、他人に相談しづらい悩みを抱えていた。
そもそもの発端は、一条天皇と亡き定子との間に生まれた第1皇子の敦康親王をとりあえずバックアップしておこうと、道長が考えたことにある。
もし、自分の娘で一条天皇の中宮である彰子に子が産まれたならば、敦康親王(あつやすしんのう)は最大のライバルになる。だが、彰子が懐妊するとは限らない。彰子に世継ぎが産まれなかった場合に備えて、道長は敦康親王の後見となり、さらに娘の彰子を敦康親王の養母とした。道長にはそういう慎重なところがあった。
ところが、道長の心配は杞憂に終わり、彰子は一条天皇にとっては第2皇子となる敦成親王(あつひらしんのう)を無事に出産。そして、今回の放送での冒頭シーンにあったように、一条天皇にとっては第3皇子となる敦良親王(あつながしんのう)も誕生。彰子は立て続けに男子を産むことになった。
道長からすれば、願ったり叶ったりの展開だが、そうなると邪魔になるのが、第1皇子の敦康親王である。さらに『光る君へ』では、彰子と敦康親王の仲が良すぎて、禁断の関係になるのではないかと、道長は疑心暗鬼になっている……という要素が加えられている。