台風の夜はさすがに家の外に出すのは忍びなかったのか、玄関に猫を留め置く監督の優しさにほっこり。そのまま、のびのび眠ってしまう猫も愛おしい。

「猫が集まってくるんじゃない。世話をしてくれる人がいないなら、猫はいなくなる」。猫の写真を撮っていた、倉敷から来た男性の言葉が印象的だ。

監督が野良猫を保護したことが映画作りのきっかけに

 ボランティアの人々の取り組みも虚しく、早速、神社には見知らぬ子猫が捨てられていた。

©2024 Laboratory X, Inc
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 実は監督、路頭に迷っていた野良猫の兄弟を保護することになり、猫の保護活動に携わっている地元の人の手を借りたのだとか。それが縁で、監督の妻で製作の柏木規与子氏が五香宮の猫たちを手術する活動に参加することになって、この映画が始まった。

 2人はコロナ禍、27年間、暮らしたニューヨークを離れ、『牡蠣工場』(15)、『港町』(18)を撮影した、柏木氏の母の故郷でもある牛窓に移住してきた。

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 映画では遠慮がちに、でも積極的に地元の住民たちとコミュニケーションを取っていこうとする2人の様子も映し出される。鄙びた街に微かに吹く新しい風。2人の参入は周囲をどう変化させていくのか。猫たちの行く末も気になる。小さな街の取り組みはまだ始まったばかりだ。


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『五香宮の猫』

10/19㊏より[東京]シアター・イメージフォーラム
10/25㊎より[岡山]シネマ・クレールほか全国順次公開

監督・製作・撮影・編集:想田和弘
製作:柏木規与子
出演:牛窓町の皆さん、猫たち、生きとし生けるもの
撮影協力:五香宮・牛窓神社、牛窓町本町自治会、てんころ庵、牛窓東小学校
配給:東風

英題:The Cats of Gokogu Shrine

©2024 Laboratory X, Inc

【WEB】 http://gokogu-cats.jp
【X】https://x.com/soda_film_info