浮上する要素は?
・・・という具合に、筆者なりに『おむすび』不評の原因を探ってきましたが、浮上策はあるのかについても探ってみましょう。
期待したい要素の筆頭としては『おむすび』が、NHK大阪の制作であるという点です。
朝ドラは、1975年に年度内2作制作体制(それまでは、1年度=1作でした)となって以降、春スタートの前期は東京、秋スタートの後期は大阪のNHKがメインで原則交互に制作(東京制作を“A制”、大阪制作を“B制”と呼んでいるそう)しています。一部例外はありますが、A制の作品の舞台は、関東以北、B制は、中部・関西以西と設定されているようです(これに倣ってB制の『おむすび』の舞台は福岡)。
あくまでも噂ですが、このA制・B制の間のライバル心は激しいと言われ、いかに前作よりも視聴率を上げられるか、話題を盛り上げられるかに腐心しているとか・・・。実際は、平均すると視聴率ではわずかにA制が上回っているようですが、公表される数字のほとんどが関東地区調査のものになっていますから、その分有利ではありますよね。
このライバル心が影響しているかどうかはハッキリと言えないものの、近年になって何かと“仕掛けてきている”のは、間違いなく大阪のB制です。
ヒロインに、撮影当時最年少16歳を起用したのは、第69作のB制『てるてる家族』の石原さとみ。しかも、この作品は劇中で突然、セリフが歌になるという“ミュージカル仕立て”な異色作でした。
史上最年長ヒロインもB制。第105作の『カムカムエヴリバディ』の深津絵里(放送開始当時49歳)です。また、この作品ではヒロインが時代ごとに3人登場するという試みもありました。
さらに第91作『マッサン』では、朝ドラ史上19年ぶりに男性主人公を復活させ、ヒロインには初めて外国人俳優(シャーロット・ケイト・フォックス)を起用し、スコットランド・ロケまで敢行しています。
さらにさらに、以前筆者が構成を担当した番組「朝ドラ100作~ファン感謝祭」内での「思い出の名シーンランキング」で、視聴者が選ぶ朝ドラ全100作中でいちばん記憶に残った名シーン堂々の第1位は、第77作のB制『ちりとてちん』の「徒然亭草若(渡瀬恒彦)が落語『愛宕山』を披露するシーン」でした。予想されたA制の『おしん』や『あまちゃん』を抑えてですから、やはり決めるところはキメルのもB制という感じなんですかね。
物語の展開についてもSNSなどで不満を吐露されている方も多かった『おむすび』ですので、ここまでの視聴者の皆さんの声へ真摯に耳を傾けて、B制ならではの“仕掛け”や“名場面創出”、そして、さらなるイケメンの投下が為されれば、まだまだ浮上することはあると思いますが、どうでしょうか?