NHK出版『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 おむすび Part1』表紙より

(小林偉:放送作家・大学教授)

視聴率は上々だが…

 9月30日に放送を開始した、NHK連続テレビ小説(通称・朝ドラ)通算111作目『おむすび』。

 まだ序盤という段階ですので論評するには少々早い気もしますが、今までのところ、視聴者の評判はイマイチのようです。視聴率的に言えば、ここまでの平均は15%超(関東地区の世帯平均視聴率)。好評だった前作『虎に翼』の全話平均が16.8%で1%ほど下げた程度ですから、それほど悪いとは言えないのですけれど、SNSなどには視聴者から辛辣な意見が飛び交っているのは確かです。半年にわたり毎日放送される朝ドラにとって、放送序盤で視聴者が離れてしまうのは痛手ですよね。

 そこで、放送作家として『おむすび』スタート直前に「おいしいトコどり!!朝ドラ名場面スペシャル」(NHK総合/9月23日放送)という特番を構成させていただいた筆者が、『おむすび』低評価の原因と浮上策を探ってみようというのが、今回のテーマです。

 ではまず、その原因から・・・

原因候補① 時代設定が“現代”の作品は当たらない?

 朝ドラの時代設定というと、明治から昭和、もしくは戦前から戦後(昭和30年代頃)にかけてのものが多いイメージがありますよね。これまでの111作を見ていくと、全体の60%超がこれらの時代に相当します。ちなみに、物語が始まる時代が最も古いのは、第93作『あさが来た』の1857年。朝ドラに江戸時代が登場するのは、意外にもこの作品だけです。

 さて、時代設定の“現代”をいつに認定するかは難しいところ。

 朝ドラ枠が1961年スタートという点を鑑み、物語の舞台が1964年の東京オリンピック前後以降に始まるものとすると111作中43作。1980年代以降にすると、31作となります。ここは筆者の独断で、多くの視聴者が同時代を生きている1980年代以降から物語が始まる31作を“朝ドラの現代劇”とすることにしますね。

 こう設定すると興味深いデータがありました。全話の平均視聴率歴代ワースト10作品をみてみると、10作全てが、この「時代設定が1980年代以降」の作品だったのです! やはり、激動の時代を背景に、貧しさや生きづらさが描かれる展開の方が視聴者に好まれるということなんでしょうかね。

 ただし、『ちゅらさん』や『あまちゃん』などのように“現代劇”でも大ヒットした作品もあるにはあるのですが・・・。

『おむすび』の時代設定は「平成」と、バリバリの“現代劇”。SNSでは「時代背景が近すぎて懐かしさも特にない」だとか「現代モノは知っている時代なだけに“それはないわ”って思うことが多いのでイヤ」などという意見が・・・。