今回は、大河ドラマ『光る君へ』において、阿佐辰美が演じる敦明親王を取り上げたい。
文=鷹橋 忍
父・三条天皇の中宮と同じ年
敦明(小一条院)は、正暦5年(994)5月9日に生まれた。
父は、木村達成が演じる東宮(皇太子)の居貞親王(後の三条天皇)、母は朝倉あきが演じる藤原娍子だ。
後に父の中宮となる、倉沢杏菜が演じる藤原姸子(道長と黒木華が演じる源倫子の娘)も、敦明と同年の3月に生まれている。
敦明は第一皇子で、同母の弟と妹に、敦儀、敦平、師明(性信入道親王)、当子、禔子がいる。
母・娍子は、大納言藤原済時の娘である。
済時は、藤原師尹(段田安則が演じた藤原兼家の叔父)の子だ。公卿ではあるが、傍流といっていい存在で、大臣にのぼることのないまま、敦明生まれた翌年となる長徳元年(995)に、数えで55歳の時に亡くなっている。
済時の死により、娍子の政治的な後見はほぼなくなったが、居貞親王(三条)は娍子を寵愛し続けた。
だが、後見の弱い娍子や敦明の立場は、極めて不安定であった。
藤原顕光の娘・藤原延子との結婚
ドラマでも描かれたように、寛弘7年(1010)2月、道長の二女である藤原姸子が、35歳の居貞親王(三条)に入侍した。この時、姸子は敦明と同じく17歳だった。
もし、姸子が皇子を産めば、有力な皇位継承候補者となるに違いなかった。
また、歴史物語『栄花物語』巻八「はつはな」によれば、この年、敦明は宮川一朗太が演じる藤原顕光の娘・藤原延子と結婚している。
結婚後は、延子の父・顕光が所有する「堀河院」と呼ばれる邸宅で暮らしたという(三博士還暦記念会編『律令国家と貴族社会』山中裕「小一条院(敦明親王)考」)。
翌寛弘8年(1011)6月13日、塩野瑛久が演じる一条天皇の譲位により、居貞親王が践祚し、三条天皇(以後、三条天皇と表記)となった。
皇太子には、見上愛が演じる中宮彰子(道長の長女)所生の敦成親王(一条天皇の第二皇子/のちの後一条天皇)が、僅か4歳で立った。