水位を上昇させる豊川放水路ゲート

 問題はまだある。4つ目。それは、霞堤地区の下流部分に位置する豊川放水路(冒頭写真)のゲートによる水位上昇問題だ。

豊川放水路。水位が5メートルを超え6メートルになる見込みがなければ、水色のゲートを開けて放水しない(2024年8月11日筆者撮影)。
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 先述したように、国は1969年に豊川放水路を完成させた。その時に作った操作規則では、水位が5メートル以上に上昇し、6メートルに達する見込みがある時にゲートを開けることになっている。だからゲートの上流側は、ゲートが開くまでその水位の影響を受ける。「開け遅れもある」と小野田さん。

 小野田さんが放水路について調べるようになったのは、放水路の上流と下流を見比べて、下流の水位は低いのに上流にはどんどん水が貯まっていく様をみたことがきっかけだという。「早くゲートを開ければ早く上流の水位が下がる。なぜやらないのかと思った」という。そして、操作規則は、完成時から一度も変わっていないことを知った。「線状降水帯だゲリラ豪雨だと、雨の降り方は変わっている。操作規則を変えて欲しいと何度も要望を出したが、変わらない」(小野田さん)。

 なぜ、この声は届かないのか。操作を行う豊橋河川事務所に聞くと、「届いているが、操作規則として定められているので、変えることはできない」と即答だった。

「だからどうして」と聞けば、「最適な分流方法なので、規則を変える気はない」と断言。「放水路を早めに開けておけば、本流だけではなく霞堤地区でも水位が下がると住民は訴えている。不都合があるのか」と問えば、「自治体との協議がある」と即答。「協議を持ちかけて異論があったのか、協議すらしていないのか」と詰将棋のような取材となった。

「開ける時でさえ、開け遅れがある」と住民が懸念していることも問うと、これにも事も無げなトーンで答えが返ってきた。「下流の巡視に1時間かかる」というのだ。ゲートを開ける前に、下流で流される人がいないように見て回る。「ゲートを開けて急激に水位を変動させるわけにいかないので、徐々に開けて、全開するまでに1時間半かかる」と言うのだ。