浸水開始水位は1メートル浸かった後?

 先祖の代から霞堤地区に暮らし続ける小野田さんが訴える3つ目の問題は、危険水位の設定や氾濫発生情報の発令の仕方だ。

 国の豊橋河川事務所では、「豊川霞堤地区浸水被害軽減対策協議会」(以後、協議会)を毎年、開催している。文字通り、霞堤地区の浸水被害を軽減するためだ。国、県、豊橋市、豊川市の他、4つの霞堤地区代表も参加する。住民の訴えで改善されたこともあれば、そうでないものもある。

 例えば、霞堤4地区にカメラが設置され、豊橋河川事務所のサイトから「4つの霞堤」の画像やその水位をリアルタイムで見ることができるようになった。

 金沢地区の霞堤(祖父川)にもカメラと簡易水位計が設置され、浸水が開始すると、少し離れた県道で回転灯が光るようになった。

 しかし、当初、浸水開始の浸水深は、水位計が祖父川にかかる橋の高さから1メートルを指した時だった。「1メートルではもう浸かっている。浸水開始水位はせめてゼロメートルにしてくれ」と一つひとつ改善を求めなければならなかった。

「昨年の雨ではここまで浸水しました」と祖父川沿いの電柱に残った洪水跡を指す小野田さん(2024年8月11日筆者撮影)。
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 今、全国の川では「川の防災情報」の他に、氾濫情報が気象庁の「キキクル」で5段階で発信されるようになった。レベル3は「高齢者等避難」、レベル4は「避難指示」、レベル5はすでに氾濫したか切迫している「緊急安全確保」。テレビ画面に真っ黒な表示で「緊急安全確保」の知らせが出ることも稀ではなくなってきた。