あいうえおとABCを勝手に覚えていた長男

 日本の幼稚園では2年間のびのびと過ごしていたが、文字を覚えるのは比較的早かった。

 年中の夏が来る前には、あいうえおとABCが頭の中にキレイに並んでいた。 町の看板、スーパーマーケットの案内表、世の中にあるすべての文字を筆者に質問してきて、その都度きちんと答えていたら、いつの間にか覚えていたのだ。

 アンパンマンのあいうえおパズルは封を開けることなく、1学期の終わりに仲良しのゆづるくんのものになり、幼児用の通信教育「しまじろう」は1歳上の教材を注文していた。

 筆者が教えたのではない。好奇心旺盛な長男が勝手に覚えたのだ。

 当時はEテレの某キッズ番組で「寿限無寿限無」を暗唱したり、山手線の駅をエンドレスに歌ったりすることが流行っていた。彼はその流行りに完全に乗っかって、みごと5歳で山手線全駅を制覇した。

 長男が韓国に来たときは、韓国語が全く分からなかった。受け入れてくれた保育園の園長先生はかなり心配していて、担任の先生も「来年学校に行かなければならないのに(こんなんで大丈夫?)」と勉強させようとしていた。

 そんな声に対して、筆者はこう言った。

「お友達の迷惑にならないようであれば、勝手にさせてください。聞いていないようでも、本人は以外と色んなことを聞いていますので」

 そして1年後、日本人から韓国人にいとも簡単に転身を遂げて、何事もなかったかのように小学校に入学した。だから子供はみんなそういうものだと、筆者は大いなる誤解をしていたのである。

 その8年後、次男が幼稚園の年長になり、そろそろ本格的にハングルを覚えないといけないなと考え始めたが、なかなか関心を示さなかった。一緒に本を読んだり、ハングルの表を見たりしたのだが、糠に釘というか、思うように進まないのである。

 幼児用の学習誌を始めようと思って、大手出版社系の学習教材を始めてみたが、やはり難しかった。