需給バランスから見れば年末までに60ドル割れ

 サウジアラビアは代表的油種「アラビアンライト」の9月積み価格を前月に比べてバレル当たり3.86ドル引き下げた。2カ月連続の引き下げだ。「サウジアラビアが世界の原油市場のシェアを確保しようとしているのではないか」との見方が広まっている。

イランからの攻撃後、イスラエルの砂漠に横たわるミサイルの残骸(写真:ロイター/アフロ)

 国際通貨基金(IMF)によれば、サウジアラビアの財政が均衡する原油価格は1バレル=約100ドルだ。だが、当分の間、この水準にまで原油価格が上昇する見込みはなく、増産して少しでも原油収入を増やすしかない、というわけだ。

 だが、この動きは危険だと言わざるを得ない。「OPECプラスの足並みが乱れた」と市場が判断すれば、皮肉にも、サウジアラビアが恐れている原油価格の急落が実際に起きてしまうからだ。

 世界の原油市場が供給過剰に陥りつつある主な要因は、中国の原油需要の低迷だ。習近平指導部は9月以降、新たな景気対策を打ち出しているが、市場は「中国の原油需要が回復するためには力不足だ」と認識している。

 米国も夏場の需要期が終わり、原油需要は減少している。

 筆者は「需給バランスから見て、年末までに原油価格は60ドル割れする」と見ているが、ここに来て中東地域の地政学リスクが急上昇している。