(英エコノミスト誌 2024年9月21日号)
シーア派民兵への2度の攻撃がレバノンでのイスラエルの戦略的ジレンマに変化をもたらすことはないかもしれない。
最初はポケベルで、次はトランシーバーだった。
9月18日、レバノンを新たな衝撃が襲った。同国と隣国シリアの各地でおよそ3000個のポケベルが爆発した翌日に、今度は家庭やオフィス、さらには葬儀の会場で無線機が爆発したのだ。
どちらのケースでも、これらの通信機器を使っていたのは、イスラエルへのロケット攻撃をほぼ1年続けているイスラム教シーア派の民兵組織ヒズボラのメンバーだった。
イスラエルにしかできない攻撃
トランシーバーを使った攻撃ではおよそ20人が死亡し、450人がケガをした。
ポケベルの爆発では少なくとも12人が命を落とし、3000人近くが負傷している。その多くは重傷だ。
爆発の直前にポケベルを見たために数百人が失明した。指や手を失った人もいる。
イスラエル政府当局者は多くを語っていない。自分たちがやったとは今後も決して言わないだろう。
だが、あのような攻撃を行う動機と手段の両方を持ち合わせているのは、イスラエルをおいてほかにない。
「私は、イスラエル北部の住民を安全に帰還させると言った。我々がやろうとしているのはまさにそれだ」
2度目の爆発の後に出した声明でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこう語った。
ヨアブ・ガラント国防相は、戦いはイスラエルの北部にあるレバノンとの国境地帯が焦点となる「新たな局面」に入ったと述べた。
こうした経緯から3つの疑問が浮上する。
通信機をどのように爆弾に仕立てたのか、イスラエルはなぜこのタイミングで爆発させようとしたのか、1年近くに及ぶヒズボラとの紛争にとって一連の攻撃はどんな意味を持つのか、という疑問だ。