(英エコノミスト誌 2024年9月7日号)
中国は旧ソビエト連邦の轍を踏む恐れがある。
中国の巨大な経済が、同じくらい巨大な自信喪失の危機に直面している。おまけに、正確な情報の「赤字」拡大で事態は悪化する一方だ。
不動産市場の暴落に対処しているさなかに、サービス業の指標が8月に悪化した。消費者はうんざりしている。
多国籍企業は記録的なペースで中国から資金を引き揚げており、外国の中国ウオッチャーは経済成長予想を下方修正している。
この閉塞感は、建設工事が中断したままの住宅から不良債権に至るリアルな問題を反映している。
だが、中国に関する情報への不信感が強まっていることの反映でもある。
中国政府はデータを改ざんし、重要な事実を隠蔽し、時には自国の経済に誤った処方箋を書いていると広く信じられている。
この情報の欠落は自ずと悪化していく。経済が脆弱になればなるほど隠蔽される知識が多くなり、人々の苛立ちが募っていくからだ。
これは単なる周期的な信頼感の問題ではない。
情報の流通を部分的に自由にする長年の政策を撤回することで、中国が新しい産業の土台のうえに経済を再構築する目標を達成することが困難になる。
旧ソビエト連邦のように、専制支配が単に不寛容なだけでなく非効率的でもあることの例になってしまいかねない。
習近平体制下で減りゆくデータ公表
習近平国家主席の政権下で検閲が強化されているのは周知の通りだ。
ソーシャルメディアの書き込みはますます厳しく監視されている。政府当局者は外部の人々と率直な議論を交わすことにますます慎重になっている。
学者は監視されることを恐れ、ビジネスに携わる人々は中国共産党のスローガンを口先だけで唱えている。
それほど知られていないのは、これと並行して専門的なデータの公表も減っていることだ。共産党にとって都合の悪い、あるいは不愉快なデータの場合は特にそうだ。
例えば、大問題になっている若者の失業に関するデータは「改善・最適化」され、数字が引き下げられた。
国際収支統計も非常に疑わしくなっており、米国の財務省でさえ困惑している。
8月19日には証券取引所が、激減している外国からの投資資金流入に関する日次データの公表を停止した。
こうした動きは、景気の現状を教えてくれる計器類の表面が曇ってしまうようなものであり、民間部門では適切な判断を下すことがますます難しくなっている。
恐らく政府当局にとっても同様だろう。