(英エコノミスト誌 2024年8月24日号)
経済制裁はザル同然だ。
ロシア外務省高官のドミトリー・ビリチェフスキー氏は先日、ロシアは西側による制裁が数十年続くことに備えていると語った。
データを見る限り、それは大した問題ではないかもしれない。
過去最大級の厳しい経済制裁が発動されているにもかかわらず、ロシア経済は勢いよく成長しており、第2四半期の成長率は年率換算で4%、第1四半期のそれは同5.4%に達していた。
貿易も好調を維持している。一体どうなっているのか。
カザフのハイテク業界の爆発的な成長
手がかりを見つけるために、中央アジアのカザフスタンに目を向けよう。同国のハイテク業界は昨年、勝利を収めたように見えた。
欧州はかつてロシアにとって最大のハイテク製品供給者だったが、ウクライナで戦争が始まってから、ほとんどのハイテク製品をロシアで販売できなくなった。
だが、カザフスタンの小さなハイテク業界――2021年には約50社で年間1億ドルの生産能力しかなかった――がその穴を埋めたように見える。
ロシアへの輸出額が2021年の4000万ドルから2023年の2億9800万ドルに急増した。
もちろん、すべてが見た目通りであるはずはない。カザフスタンでは欧州からの電子製品輸入額も2億5000万ユーロから7億900万ユーロに急増した。
カザフスタンの企業が生産力を魔法のように増強させたのか。それともロシア企業が昔から付き合いのある欧州企業から品物を取り寄せる迂回ルートを見つけたのか。
判断は読者にお任せする。
カザフスタンは、ウクライナ侵攻後にロシアや欧州との貿易が不思議なほど盛んになった国の一つだ。
ほかにもアルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア(グルジア)、トルコ、そして残る中央アジア4カ国で同様な現象が見受けられる。
欧州連合(EU)からこれらの国々への輸出は2023年に460億ユーロ増加した。2021年の水準から50%増えた計算だ。
この増加額は、2021年から2023年にかけて観察された欧州からロシアへの輸出額減少幅の4分の3に相当する。