(英エコノミスト誌 2024年8月31日号)

スーダンでは大規模な洪水も発生、人々にさらなる困難をもたらしている(8月26日、写真:ロイター/アフロ)

数百万の死者を出し、アフリカ・中東に混乱を拡大させる恐れがある。

 スーダンの戦争に向けられている世界の関心は、ガザやウクライナのそれに比べればごくわずかだ。

 しかし、このアフリカの戦いはそのどちらよりもひどいものになる恐れがある。

 戦火に包まれているのは、アフリカで3番目に広い国だ。首都は完全に破壊された。

 およそ15万人が虐殺された模様で、遺体が当座しのぎの墓地に積み重ねられているのが衛星画像で見て取れる。

 すでに人口の5分の1に当たる1000万人以上が避難を余儀なくされている。飢饉が迫っており、1980年代のエチオピアの飢饉をしのぐ深刻なものになりかねない状況だ。

 年末までに250万人の文民が命を落とすとの予想もある。

地政学的な時限爆弾

 本誌エコノミストの現地リポートにもあるように、これは世界最悪の人道危機であり、地政学的な時限爆弾でもある。

 スーダンという国の広さと位置ゆえに、国境を越えてカオスを運ぶエンジンとなる。

 中東諸国とロシアは、罰せられることなく紛争当事者を支援している。西側諸国は関与せず、国連は機能不全に陥っている。

 この地で繰り広げられている暴力はいずれ近隣諸国を不安定にし、難民が欧州に向かう引き金を引くことになる。

 スーダンには紅海に面した海岸線が約800キロあり、国の内部崩壊は世界貿易の動脈の一つであるスエズ運河をも脅かす。

 紛争の主たる当事者は従来型の軍隊であるスーダン軍(SAF)と、民兵組織の即応支援部隊(RSF)だ。

 どちらもイデオロギー的な目標は掲げておらず、民族的アイデンティティーで一致団結しているわけでもない。

 共通しているのは、国家とその利権を手に入れたいと望む悪徳指導者の指揮下にあることだ。

 スーダンは1956年の独立以降、断続的な内戦にずっと耐えてきた。

 2011年には、血みどろの戦いを経て南スーダンが分離独立するに至っている。また20年前にはダルフールでの大量虐殺が世界の耳目を集めた。

 だが、そのような身の毛もよだつほど恐ろしい基準に照らしても、現在進行中の紛争は衝撃的だ。

 かつて栄えた都市ハルツームは荒廃している。どちらの陣営も非戦闘員を攻撃し、子供を兵士に仕立て、飢餓を引き起こしている。

 信頼できる筋からは、RSFが集団レイプや虐殺も行っているという非難も聞かれる。