副大統領候補のテレビ討論は白熱の大論争に、礼儀正しさにも視聴者喝采
トランプハンデでバンスはウォルズに判定負け、でも「次」の切符は入手
2024.10.3(木)
高濱 賛
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MAGA政策集団の全面支援を受けたバンス
バンス氏は、オハイオ州の人口4681人の町(イースト・パレスティーン)から出てきたヒルビリー(田舎者)とはいえ、イエール法科大学院で東部エリートの空気を吸っている。
バンス氏にとっては、米エリート層を代弁するニューヨーク・タイムズのハリス・ウォルズ推薦に危機感を感じたに違いない。
その意味では、野球で言えばまさに9回の裏ツーアウト満塁で代打としてバッターボックスに入ったようなものだった。
狙う標的は、すでに投票する候補者を決めている岩盤層ではない。
米国の有権者の5人に1人は、バンス氏もウォルズ氏も知らないといわれる。そうしたまだどちらに投票すべきか悩んでいる有権者、特に激戦州の無党派層、投票態度未決定の有権者(約2割とみられる)が標的だ。
好感度では、米国民全体ではバンス氏が36%、ウォルズ氏は42%。無党派層ではバンス氏が30%、ウォルズ氏は37%で、ウォルズ氏がともにリードしている。
(news.gallup.com/favorable-ratings-harris-trump-remain.)
無党派層の有権者の最大関心事である経済政策、移民問題、人工中絶、同性愛などのアジェンダで自分たちに共鳴してくれるか。
ウォルズ氏は、中西部の典型的な「おっつあん」らしく、発言をするときにはカメラを見て、「今テレビを観ている皆さん」「観ている皆さんもご存じの通り」と視聴者目線で語りかける。
その戦術はかなり効果があったのではないだろうか。
容姿、好感度、発信力などもテレビを通した「ビュジュアル選挙」にとっては政策以上に重要だ。
特にバンス氏は、92年ぶりの「ひげの副大統領候補*1」。これに対する有権者の受け止め方は絶対に無視できない。
*1=一昔前ではエイブラハム・リンカーン第16代大統領などのひげ面が正副大統領としてはポピュラーだった。しかし、現代でひげ面の大統領候補はウィリアム・タフト第27代大統領が最後。副大統領候補では、共和党のチャールズ・カーティス候補が最後だった。1931年、ヒューバート・フーバー第31代大統領候補と組んで再選に臨んだが敗れている。トランプ氏はひげ面を嫌っている。