歩調がズレ始めた銅価格と中国経済

 コロナ・ショック後の銅価格の反動上昇は、むしろ世界経済の回復との連動性が高く、出遅れた中国との連関は絶たれた感がある。

 しかも、中国の場合は、不動産に絡む過剰債務問題も手伝い、2023年から2024年にかけてのインフレ率は、マイナス圏に沈みこんでいた。高止まりする銅価格とは対照的であり、中国のデフレ経済への突入を懸念する声も大きくなっていたのである。

 中国のインフレ率の落ち込みは、米国のインフレ率とも好対照をなしていた。米国のインフレ率が2022年半ばに8%を上回る中でも、中国のそれは3%を上回ることはなかった。

 両国は、金融政策も真逆の道程を歩んだ。米国がインフレ懸念を理由に急速に引き締める一方で、中国は緩和姿勢を維持し続けてきたのである(2024年9月に米国は緩和に転換)。

 仮に、中国経済が米国と同様にコロナ・ショック後に回復していれば、銅価格の水準は切り上がっていた可能性も否定できない。世界景気の動向と銅価格が連動しなくなったのは、中国経済の不調が要因であると考えると合点がいく。

 インフレ懸念に悩まされた英米が、物価の落ち着きを取り戻せたのも、皮肉にも中国経済の不調によるところかもしれない。

 その中国政府が、さらなる経済対策を本格化させるならば、主要国の物価安定見通しにも揺らぎが生じる可能性がある。