中国の景気対策が奏功しても米国インフレ率への影響は軽微だが…

 米国のインフレ懸念が高まった2022年は、コロナ禍経済からの正常化の過程で、賃金上昇が加速した影響が大きく、商品価格の上昇が主役であったわけではない。

 もちろん、ロシアによるウクライナ侵攻による天然ガス価格の上昇や、一時的な農産物価格の上昇の影響が皆無であったわけではないが、雇用環境の変化に伴う賃金の趨勢が、より大きな影響を与えたはずである。

 そのように考えると、仮に中国政府による経済対策が奏功し、商品価格上昇が再現されたとしても、米国のインフレ率に限っては、大幅に上昇局面入りする懸念は大きくないのではないか。

 むしろ、消費者物価指数の上昇が再現されるのは、海外要因よりも国内要因である可能性が高い。つまり、次期大統領による、人口・移民政策を通した労働人口の趨勢が、より米国のインフレ率を左右するであろう。

※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。YouTubeで動画シリーズ「ハートで感じる資産形成」(外部サイト)も公開しています。

平山 賢一(ひらやま・けんいち) 東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト
1966年生まれ。資産運用会社を経て、1997年東京海上火災保険(現:東京海上日動火災保険)に入社。2001年東京海上アセットマネジメントに転籍、チーフファンドマネージャー、執行役員運用本部長を務め、2022年より現職。メディア出演のほか、レポート・著書などを多数執筆。主著に『戦前・戦時期の金融市場 1940年代化する国債・株式マーケット』(日本経済新聞出版)、『物価変動の未来』(東峰書房)などがある。YouTubeで『ハートで感じる資産形成』シリーズの発信もしている。

筆者の近著『物価変動の未来 人口と社会の先を見晴らす』(東峰書房)