金融所得課税の強化に意味はあるのか?

森永:確かに、日経平均先物の大幅下落は事実ですが、ドル円は総裁選の約2日前の25日から円安傾向に、日経平均先物相場も上がっていたので、市場は「高市トレード状態」にあったのでしょう。それが27日に石破氏が総裁になった後、日経平均先物もドル円相場も「元に戻った」のです。

 本当の石破ショックはむしろ、来年以降になると見るべきでしょう。

 私は利上げや増税に頭から反対しているわけではありません。今の日本経済の状態を冷静に見た時に、石破氏が言及した金融所得課税の強化や法人税増は、「今、やるべきではない政策」と主張しているだけです。

 もちろん、課税対象になるのは富裕層や企業ですが、日本のマクロ経済から見ると「負担増」であることは間違いありません。

 実質賃金は6、7月に戦後最長の27カ月連続マイナスからようやくプラスに転じましたが、これは夏のボーナスを反映したもので、夏季賞与を除けば依然として伸びていません。

 さらに、経済協力開発機構(OECD)が予想した今年の世界の経済成長予測では、G7諸国は軒並みプラス指標ですが、日本は「マイナス0.1%」です。国内経済は悪いと言わざるを得ません。

 そんな状況の中で誤った経済政策を打つと、デフレにもう一度後戻りするリスクがあります。

 例えば、賃上げが徐々に盛んになってきましたが、こうした状況で法人税を上げてしまうと、企業は安心して給料を上げられないでしょう。

 利上げも増税も、きちんと時期を見て行う必要があります。