「石破増税」のシナリオとは
森永:彼が増税路線を進むとすれば、解散総選挙後すぐではなく、おそらく2025年の夏前だと私は見ています。
いきなり増税路線を明確にすると、相当な反発があるでしょう。一方で、今、日銀の植田総裁は利上げを段階的にしていく方向性で動いているので、しばらく「放っておく」のではないでしょうか。
石破氏としては「日銀の独立性」を強調しつつ、植田総裁の利上げは放っておく。政策金利が上がれば国債の利払い費が増えるため、「これ以上の国債発行は控えるべきだ」という機運が高まります。
そうなることを待って、2025年6月の「骨太の方針」で、再び「国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化」を明記するわけです。
岸田政権下でもすでにPBの黒字化は明記されていますが、当時はまだ7月31日の日銀の追加利上げ(上げ幅約0.15%)の前でした。これまでのPB黒字化の議論は「金利がない世界」が前提だったということです。ところが、この先、さらなる利上げがあると国債の利払い費が増え、それを増税で賄おうという話になるのです。
現在の税収では政策的費用も十分に賄えていないからこそ、国債発行で補っているわけですが、「金利ある世界」になり、国債の発行も控えつつ、かつ国債の利払いまで増えるとなれば増税は避けられません。
ここから石破氏が温めてきた、金融所得課税や法人税の強化が、いよいよ現実味を帯びてくるわけです。国民としては、そろそろ石破政権にも慣れてきた頃合いになります。増税の議論はもしかしたら、「消費増税」にまで及ぶかもしれません。そうなれば、かなり恐ろしい事態に日本経済は陥ります。
──石破氏当選後の相場の下落を「石破ショック」と表現する論者もいます。