「今後も知事職を担わせていただける」と自己評価

 不信任決議の前日、私はこんな質問をした。

──斎藤さんは3年前の選挙で、「元彦」という名前から知事を目指したと語り、知事になるのが天命とまで言っていた。しかし今、議会の全会派から知事失格だと言われている。それでも職にとどまるのは、今でも知事の職責を担う資格があると自分では考えているのか。

 斎藤の名前は1960年代に兵庫県知事を務めた金井元彦から名付けられた。それをきっかけに地方自治を志し、知事をめざしたことを踏まえての問いである。答えはこうだ。

「3年前に知事に就任し、コロナ対策や改革をしっかりやってきた。その実績を踏まえて、私としては今後も知事職をしっかり担わせていただけると思っている。与えられた任期の中でしっかり仕事をしていくことが私の責任だし、やらなきゃいけないと考えている」

 批判や苦言、厳しい評価には耳をふさぎ、自分の希望や都合のよいことだけを一方的に語る。就任まもない頃、県内の市町長に会おうとせず、当時明石市長だった泉房穂氏の電話を着信拒否したり、SNSの批判的意見をブロックしたりしたことが問題になった。そんな姿を見て、ある県政担当記者が漏らしたつぶやきが今、現実になっている。

「あのメンタルでは一期4年もたないんじゃないですか」

大挙して押し寄せる報道陣とは対照的に、見送る職員や県民はわずかだった最終登庁日

 自動失職・出直し選出馬を発表した9月26日の記者会見では、吹っ切れたのか、表情にやや生気が戻り、言葉にも感情が乗っている印象を受けた。ただし、自分に都合のよいことだけを語るのは同じだ。

 まずは「改革」の成果。県の財政調整基金が30年ぶりに100億円を超え、130億円に達した。自身の給与・退職金カット。公用車センチュリーの見直し。県庁舎の建て替え凍結。県OBの65歳以上の天下り廃止……評価や賛否は分かれるが、繰り返しアピールしてきた内容だ。