(英エコノミスト誌 2024年9月28日号)
現実味のある戦争目的とNATO加盟を目指す時が来た。
ウクライナと同国を支援する西側諸国が勝利を収めるためには、まず劣勢であることを認める勇気を持たなければならない。
この2年間、ロシアとウクライナは多大な犠牲と損害を伴う消耗戦を戦ってきた。こんなことをいつまでも続けられるはずがない。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先日訪米し、ジョー・バイデン大統領との会談で「勝利計画」なるものを提示した。
武器と資金の追加支援を盛り込んだ計画だと思われる。
だが実を言えば、ウクライナはそれよりもはるかに野心的なものを必要としている。それは、急いで方針を転換することだ。
東部戦況の悪化、国内外で戦争疲れ
ウクライナの戦況悪化の程度は同国東部、とりわけポクロウシクという都市の周りでのロシア軍の前進で測ることができる。
今のところ、そのペースは緩やかで犠牲も多い。最近の推計によれば、ロシア側の死傷者は1日当たり1200人前後に達している。すでに計50万人の死傷者が出ているのにだ。
だが、人口がロシアの5分の1にすぎないウクライナも傷を負っている。ロシアが精根尽き果てる前に、ウクライナの戦線が崩壊する恐れもある。
ウクライナは戦場の外でも苦労している。
送電網の大半をロシアに破壊されてしまったため、1日当たりの停電時間が最長16時間にも及ぶ状況で寒い冬を迎える。
国民の間には厭戦気分が広がっている。
陸軍は奪われた領土の奪回どころか、戦線の維持に必要な兵士の動員・訓練も十分に行えずにいる。多くの国民が望む完全な勝利と、そのために戦う能力や気力との差は広がる一方だ。
諸外国にも疲れが広がり始めている。
ドイツとフランスの極右勢力は、ウクライナ支援などカネのムダ遣いだと息巻いている。
米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲くかもしれない。同氏は何でもできるが、その言葉の端々からは、ウクライナをロシアのウラジーミル・プーチン大統領に売り飛ばしたいという思惑がうかがえる。