水災補償は「リスク細分型」に

 筆者の自宅マンションの場合、たまたま9月が更新期限となっていて値上げ前の“駆け込み加入”ができた格好だが、これでひと安心とはならない。この先を考えれば、5年後の更新時の保険料暴騰は必至だからだ。

 火災保険では、火事に限らず落雷やガス爆発、強風、台風、ゲリラ豪雨などによる被害も補償の対象となっており(保険によっては特約扱いとなる場合もある)、10月1日からは保険料の値上げと同時に水災補償の保険料が細分化される。

 水災補償の保険料は、水災のリスクの高さに応じて市区町村ごとに5段階に分けられることになる。前述した参考純率を基に説明しよう。

図表:共同通信社

 M構造(マンション構造)の建物の場合、最大の引き上げ率となるのは豪雨災害が多発する宮崎県で、最もリスクの低い1等地で△20.4%、高い5等地だと△29.9%にもなる。ちなみに東京都は、1等地が△4.3%、5等地が△20.2%だ。

 リスク細分型は既に自動車保険などで導入されている方式で、被災リスクが高い人ほど保険料が高くなる。被災住民からすれば、災害で想定外の出費を強いられた上に保険料も跳ね上がって踏んだり蹴ったりではないだろうか。

米国では“火災保険難民”が発生

 保険制度の根底にあるのは相互扶助の精神だ。しかし、「地域のリスクは地域でシェアする」方式では、特に人口や世帯数の減少が激しい地方では支え手となる住民の負担が大きくなってしまう。

 米国では2010年代以降、被害総額が10億ドルを超える「ビリオンダラー・ディザスター」が増え、住宅向け保険事業の収支悪化による撤退が相次いでいる。その結果、“火災保険難民”が出てきているというから、リスク細分化程度で済んでいる日本はまだマシだという見方もできる。