堀田の対外認識

阿部正弘

 ところで、堀田が阿部に示し、阿部が堀田再任に踏み切った意見とはどのような内容であったのか、以下、それについて詳しく見ていこう。

 欧米に敵わない理由として、欧米には頑丈な軍艦があるが、日本のものは小さく軟弱なものしかなく、これが欧米に及ばない1つ目である。欧米は大砲に詳しく、我々は武器が整っていないのが2つ目である。欧米は兵が強く、戦場の経験も多いが、日本は平和に慣れてしまい、武備が不十分であるのが3つ目である。

 この3点によって欧米に対する勝算はないので、まずは貿易を許して、10年くらいも過ぎた後に、十分な国益とならなければ、その段階で条約を破棄すればよく、それまでに武備を厳重にすることを期したい。なお、国益に適えば、そのまま条約を維持すべきであろう。

 堀田の意見は、現状の武備ではまったく西欧諸国と互角に戦うことなど叶わないとの認識の下、無謀な攘夷を否定したものの、攘夷の方針自体は堅持して通商条約を容認し、その利益をもって富国強兵、海外侵出を企図したものである。まさに、未来攘夷そのものであり、阿部老中が志向するものであったのだ。