- またしても、英国で「超大物」の性的暴行疑惑が明らかになった。老舗高級百貨店「ハロッズ」の元オーナー、モハメド・アルファイド氏だ。
- BBCがおぞましい所業の数々を告発するドキュメンタリー番組を放送。医師や元警察関係者らが組織ぐるみで卑劣な隠蔽工作に関わっていたという。
- アルファイド氏の息子はダイアナ元妃の恋人とされ、大富豪というだけではなく英国社会から注目を集めてきた。2023年に死去したが、なぜ、このような「ケダモノ」が長年、野放しにされてしまったのか。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
>>【写真】南仏でバカンスを過ごすアルファイド氏の息子ドディ氏とダイアナ元妃
働く女性のいったい誰が、このような状況に置かれることを想像できるだろうか。
老舗の高級百貨店に勤めるあなたは、ある日突然「就業に義務付けられている」として性感染症やエイズにかかっていないか、婦人科受診を強制される。診察は内診を含み、女性にとって非常にデリケートなものだ。
そして、その受診内容の詳細があなた自身には知らされてもいないのに、診察した医師により、あなたへの性的暴行を目論む富豪の百貨店オーナーに逐一報告されていたとしたら──。
英BBCは9月19日(現地時間)そんなおぞましい光景がかつて、英国の高級百貨店で繰り広げられた疑惑をドキュメンタリーで描いた。そして、そのオーナーの所業は、見て見ぬ振りをした百貨店幹部のみならず、元警察関係者の警備員、また、女性たちを診察した医師などによって長年可能にされたことも報じた*1。
*1:Mohamed Al Fayed accused of multiple rapes by staff(BBC)
富豪のオーナーはその一切の罪を問われることなく90年余りの人生を謳歌し、2023年8月、老衰で死んだ。遺族は声明で、彼の死は安らかで、長く充実した老後を過ごしたと記した。性的暴行疑惑が真実であるなら、被害者にとってはあまりに不条理な結末だっただろう。
これは、ヤクザが娼婦に睨みを効かせる場末の売春宿で起きた出来事ではない。繰り返すがかつては、れっきとした王室御用達であった英高級百貨店「ハロッズ」を舞台にした事件だ。
オーナーの名は、モハメド・アルファイド(享年94)。米経済誌フォーブスは、アルファイド氏死去の際、その純資産を20億ドルと推定した。