15歳の少女にも性的暴行した疑惑

 アルファイド氏の名前が世界的に注目されたのは、1997年夏のことだ。ダイアナ元皇太子妃がパリで事故死した際、車に同乗して共に死亡したのが、アルファイド氏の息子・ドディ氏であった。

 アルファイド氏はこの事故によって一躍「悲劇の父親」として、世界的に知られるようになった。後述するが皮肉にもこのことが、同氏がハロッズで性的暴行を続けることを可能にした、という可能性もある。

被害者の元従業員らが会見=9月20日(写真:ロイター/アフロ)

 現在アルファイド氏は、少なくとも40人近い元女性従業員らに対する性的暴行疑惑を告発されている。BBCの番組放送の翌日、被害女性たちの弁護チームは会見で、アルファイド氏がレイプやレイプ未遂、また、未成年者に対しても性的暴行を加えたと発表した。放送後には更に100人以上の女性から連絡があったとし、今後被害者の数が膨大に膨れ上がる可能性もある。

 番組で証言した女性の1人は、14歳のとき母親とともに店内でアルファイド氏に出会ったという。証言によれば、女性は当時未成年であったにもかかわらず、同氏からハロッズで働かないかと誘われた。アルファイド氏は年齢については「なんとかする」と話したという。

 ほどなくハロッズで働き始めた女性は2008年5月、当時15歳だったが同氏の寝室に来るよう命じられ、体を触られたり口に舌を入れられそうになったりしたなどの、性的暴行を受けたとBBCに証言している。

 この件に関しては警察の捜査対象になったにもかかわらず、女性が暴行の起きた日を覚え違えていたことや、証拠不十分であったことなどを理由に不起訴とされている。検察は、少女に関する2009年の事例のほか、2015年にもアルファイド氏の性的暴行容疑に関する証拠を提示されたが、有罪に持ち込める「現実的な見通し」が立たず、訴追を断念したとしている。

 女性たちによる告発が放送されてから、2008年から13年までスターマー英首相が検察局長を務めていたことも注目された。官邸のスポークスマンが、首相は当時この件を担当していなかったと火消しに追われる事態にまで発展している。