財政政策に関しては石破・河野とそれ以外

 金融市場が興味を持つのは各候補の経済政策スタンス、より具体的には財政・金融・通貨政策の方向性に尽きる。金融政策と通貨政策は理論的に一致すべきなので、別個に考える必要はない。

 まず、財政政策に関して言えば、現状、石破氏と河野氏以外は引き締め的な色合いを封印しているように見受けられる。特に、石破氏は金融所得課税の必要性を訴えた印象が金融市場に色濃く残っているので、当選の暁には株式市場の荒れ模様が懸念される。河野氏も、折に触れて財政規律の必要性に言及してきた経緯がある。

 これに対し、小林氏などは「経済が財政に優先する。 経済を冷え込ませるような財政運営はあってはならない」とかなりはっきり述べている。高市氏も「何よりも経済成長は必須」「戦略的な財政出動」など財政については拡張路線を支持している。財政政策に関しては、現状、石破氏/河野氏とそれ以外という区分けで筆者は見ている。

 一方、市場が注目する金融政策へのスタンスに関しては、高市氏がアベノミクスの継承者としてのイメージを前面に押し出し、「金融緩和は我慢して続けるべき、低金利を続けるべき」と旗幟鮮明である。

 裏を返せば、それ以外の候補はこれといった情報発信をしていない。強いて言えば、河野氏(や茂木氏)は7月利上げ直前に、利上げを求めるような発言が話題になったものの、今回の選挙戦においてこれを強弁しているわけではない。小林氏もこれといった言動が見られない。

 恐らく高市氏以外の候補において、金融政策については「喋りたくない」が本音なのだと察する。

 全候補にとって、物価高対策が国民の支持を取り付ける上での最優先事項には違いない。ならば、ようやく正常化に着手した日銀を今一度緩和路線に引き戻し、円安を助長させるような言動は本来的にリスクでしかない。その意味で高市氏の立ち位置は特殊なのだが、だからこそエッジが立ち、特定層からの支持を惹きつけているとの見方もできる。

 その他候補の「喋りたくない」という本音をよりかみ砕けば、「既に日銀が憎まれ役として利上げに着手しているのだから、わざわざ火中の栗を拾いに行くべきではない」という思いが強いはずだ。

 自身の発言が8月初頭のような大波乱を起こしてしまえば、当分の間、汚名を着せられることになる。黙っていても日銀が処理してくれるのだから、わざわざ金融政策について言及するのはローリスク・ハイリターンである。金融政策に関しては、高市氏とそれ以外という区分けで良いのだろう。