イスラエルにはハマスの大規模攻撃を許してしまった反省がある。イスラエル・ハマス戦争の報道でピューリッツァー賞を受賞したイスラエルの調査報道記者ロネン・バーグマン氏の『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』(早川書房)を読むと、暗殺の系譜が分かる。

 日本大学危機管理学部の小谷賢教授(インテリジェンス・コミュニティー)によると、イスラエルがこれまでに行ってきた暗殺作戦は2700件に上るともされる。『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』には血なまぐさいイスラエル建国の側面が記録されている。

「血と炎の中で倒れたユダヤは血と炎の中で蘇る」

 その牙は早くも1944年、英国委任統治領パレスチナの犯罪捜査部対ユダヤ部隊指揮官に向けられている。反ユダヤ主義は欧州に深く根ざしており、ユダヤ人は自分たちの国家を建設しないと自由と安全を手に入れることはできないと、19世紀末にシオニズムが確立された。

 迫害される弱いユダヤ人のイメージを一掃するため「血と炎の中で倒れたユダヤは血と炎の中で蘇る」を合言葉にユダヤ人戦闘部隊が結成された。ユダヤ教の聖典タルムードにある「誰かが殺しに来たら立ち向かい、こちらが先に殺せ」という教えが暗殺の免罪符だ。