30代のころのキヨ・ヤマダ

(山田敏弘:国際ジャーナリスト) 

 筆者は最近、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)を上梓した。

 この拙著では、スパイについて幅広く取材を行った。もしかしたら読者の中には、スパイと言われても、「本当にいるの?」または「なんだか胡散臭い」と思う人もいるかもしれない。

 ところが現実には、この瞬間もスパイは世界中でうごめいている。

反体制分子を国外で殺害

 8月26日、オーストラリア発でこんなニュースが報じられた。

「オーストラリア国内で、これまでにないほどの外国勢のスパイ活動が確認されている」

 中国、サウジアラビア、イラン、シリア、北朝鮮、マレーシアなど国外からの諜報員は、オーストラリアに入る自国の移民や難民などをスパイし、彼らをコントロールしようとしているという。

 8月27日には、ニューヨークタイムズ紙がこんなニュースを報じている。

「ロシアは、(スパイなどの)工作員をドイツに送り込み、反体制派を殺害している。この手の工作は過去にロシアが何度も実施してきたとして非難されてきた・・・ロシア政府はソビエト時代のように、2006年にテロリストとして脅威とみなされる人々を国外で殺害することを合法化した」

 こうしたスパイの絡むニュースは枚挙にいとまがない。これがスパイの世界中の現実である。