(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)
日本でも連日報じられた、G20大阪サミット。言うまでもなく、G20でもっとも注目されたのは、貿易戦争を繰り広げている米中による首脳会談だった。そして6月28日の米中首脳会談からは、驚きのニュースが報じられた。
ドナルド・トランプ大統領は6月29日、米政府によって5月に米企業との取引を禁じる「エンティティー・リスト」に加えられていた中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)について、米企業との取引を許可する方針だと発言し、世界を揺るがした。安全保障につながるものは売らないと条件をつけたが、この発表を受けて米ウォールストリート・ジャーナル紙は、トランプがファーウェイに「命綱を投げた」と報じている。
ただどこまでファーウェイが米企業にアクセスできるのかについては、まだ細かなことは明確にはなっていない。とりあえずは、再開する米中の貿易交渉の中で決定していくということのようだが、少なくとも、その間、ファーウェイは米企業から部品などを購入できるようになると見られる。
もちろんまだ、エンティティー・リストから解除されるのかどうかもわかっていない。おそらく背景としては、ファーウェイが習近平国家主席に働きかけ、習近平がトランプに直談判し、トランプもそれを容認したというのが真相ではないだろうか。
過去にZTEに対しても同様の措置
ではこの突然のニュースをどう捉えればいいのだろうか。このファーウェイに対する、「禁止措置からの緩和」という流れは、実は、過去にも似たようなケースが起きている。中国通信機器大手・中興通訊(ZTE)に対する米政府の措置だ。
米政府は2017年、ZTEが対イラン・北朝鮮制裁に違反して米国製品を輸出しており、さらに米政府に対して虚偽の説明をしたと発表。それを受け、2018年4月、米商務省はZTEを「エンティティー・リスト」という“ブラックリスト"に加え、米企業との取引禁止を7年間禁じる措置をとった。