「危険運転致死傷罪」は、飲酒運転や大幅な速度違反、信号無視など、危険な運転による事故の罰則が軽すぎるのではないかという遺族や国民の声の高まりを受け、2001年、刑法の一部改正によって新設されました。こうした行為によって人を死亡させてしまった場合は1年以上20年以下の懲役、負傷させてしまった場合は15年以下の懲役となっています。
一方、「過失運転致死傷罪」はあくまでも「過失」として処理され、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金となります。しかし、初犯の場合は執行猶予、もしくは罰金という軽い刑罰で済まされるのが一般的です。
ちなみに、「危険運転致死傷罪」とみなされる事案についての条文には、「アルコール又は薬物を使用して正常な判断ができない状態で運転する行為」と記されています。前橋地検は本件について、この行為にはあたらないと判断したことになります。
「なんのための危険運転致死傷罪なのか」
「プロのドライバーが、運転する40分前に焼酎440mLを飲んで、制限速度時速60キロの道路を時速90キロで走り、センターラインをオーバーして反対車線のさらに向こうの分離帯まで飛び越えて行ったのです。いったい、この運転のどこが『不注意』であり、『過失』なのでしょう。前橋地検は何を誤った判断をしてしまったのでしょう」
そう訴えるのは、1999年、東名高速で飲酒運転のトラックに追突され、3歳の長女と1歳の次女を失った井上郁美さんです。この事故では井上さんの乗用車が追突され、その衝撃で炎上。運転していた郁美さんと助手席に乗っていた夫の保孝さんはかろうじて脱出しましたが、後部座席でチャイルドシートに座っていた幼い姉妹が犠牲になりました。
加害者の運転手は、飲酒運転の常習者でした。この事故の刑罰(懲役4年)があまりに軽いことに愕然とした井上さんは、同じ思いを抱く遺族らと共に、法改正に向けて尽力しました。それだけに、群馬の飲酒事故が過失で起訴されたというニュースを見た日は、怒りと悔しさで眠れないほどだったといいます。
SNSのコメント欄にも、今回の事故を「過失」で起訴した前橋地検に対して、「なんのための危険運転致死傷罪なのか?」「基準値以上のアルコールが検出されたら、危険運転で起訴すべき」という批判の声が多数投稿されています。