体を水平ギリギリに、圧巻のハイドロブレーディング

 この日、「春よ、来い」で披露した代名詞でもある体を水平ギリギリまで倒して滑るハイドロブレーディングに地元の記者は圧倒されていた。

羽生さんは被災地近くの会場からの配信を希望した(c)矢口亨

 羽生さんは普段はスケートに馴染みが薄い記者に丁寧に「ハイドロブレーディングという技なんですが、このプログラムではあのぐらい(ギリギリまで氷上に顔を)つけるものなので、すごく深い意味があるわけではないのですが」と断った上で、「(震災発生時は)この場所の周辺がすごく大きな被害があった場所ではないですけれども、この周辺の地面も大きく揺れましたし、この地方として、すごくすごく大きな被害がありました。そうこともあって、何か静まってほしいなという気持ちもありました」と演技に込めた思いを打ち明けていた。

 配信のイベントにもかかわらず、羽生さんが被災地で舞うことにも強いこだわりがあった。

「配信という形を取った時に、選ぼうと思えば、他の地域で滑るということも可能でした。ただ、僕はなるべく(被災によって)つらい思いをされた方々、いま現在もつらいと思っている方々、いろんなことで悩んでいる方々の近くで滑りたいと思いました」

「その地域の力のようなものや、現場の空気みたいなものがあり、僕たちはすごく感じながら滑るので、そこの空気の大切さとか、ちょっとでもこの場所から波動として、ちょっとでも空気が動いて、皆さんの元に届けと思いながら、配信でも滑らせていただきました」

 そんな思いがあったからこそ、地元とのつながりも大切にした。