演説はウソだらけだった
その翌日、ネットで前日の集会の記事を探していると、いくつものメディアが、トランプの集会での発言を事実確認した記事を見つけた。
それらの記事を読んでいくと、トランプの演説にどれだけウソや事実誤認、紛らわしい発言が紛れ込んでいたのかがわかってきた。
大統領就任以来、トランプの発言をファクトチェックしつづけてきた「ワシントン・ポスト」紙によると、ウィスコンシン州の演説だけで、70カ所を超す部分がファクトチェックされ、間違いやウソ、誤解を招くと判定されている。前回のオハイオ州の演説では110カ所以上が同様の指摘をされている。
経済が絶好調というのもウソだ。退役軍人のプログラムを作ったのはオバマだったし、オバマ政権で閉鎖した工場の数も大幅に水増しされていた。経済の恩恵を受けているのが貧困層であるというのもウソ。最も所得が伸びているのは上位10%の人びとだった。
なかでも、トランプのウソの最たるものが、自分は最も黒人よりの大統領だという主張だ。
ハワード大学の教授であるマイケル・ファントロイは、こう話す。
「これはトランプの発言の中でも、最も不遜な発言だ。トランプは歴代の大統領に比べ大きく見劣りがするだけでなく、黒人への貢献度ということでは最低に近い」
なんだか前日は美味しそうにみえて平らげた料理が、翌日になって、ゴキブリやネズミが走り回る不衛生な厨房で作られていた、と知らされたような後味の悪さを覚えた。
見ていた映像が急に暗転したような錯覚に陥った。
若い女性の後ろ姿だと思っていたスケッチ画が、実は老婆の顔だったという騙し絵を見たときの薄気味悪さにも似ている。
どうすれば、こんな手の込んだデタラメを口にできるのか。これが全部ウソだとすると、何を信じればいいのか。トランプの演説をファクトチェックしていくと、視界が歪んでいくような錯覚に陥る。
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◎鉄板支持者の団結を固めるトランプのウソ【前編】日本人「潜入記者」が見たトランプ陣営