「オバマの失策は景気だけじゃない。オバマは、核合意したイランに1500万ドルも与えた。しかも、そのうち17万ドルは現ナマでだ。信じられるか」

 この短い文章をしゃべる間、支持者からのブーイングが3回も挟み込まれる。トランプのオバマへの敵意が、支持者にも乗り移ったかのようだ。

「オバマが結んだイランとの核合意のせいで、イランがアメリカを攻撃する財源を手に入れただけじゃなく、核の包囲網の突破を許したんだ。この合意はもうすぐ期限切れとなり、イランは核兵器を作る能力を手に入れるが、イランには核兵器を作らせない、と俺が保証しよう」

 壇上に立ったトランプは水を得た魚のように、自由闊達に話し、縦横無尽に聴衆を楽しませた。トランプは、まるで手練れの人形遣いで、会場に集まった支持者という人形を自由自在に操った。聴衆は、トランプの掌で転がされ、歓喜し、叫び、怒りながら大満足して帰っていった。

聴衆はほぼ白人

 その翌週、私は再びトランプを見るために、ウィスコンシン州に足を運んだ。

 会場はミルウォーキーの中心部にあるスポーツ施設だった。演説が始まる前に満員札止めとなった。

 トランプが大音量でかかるマイケル・ジャクソンのヒット曲「今夜はビート・イット」に乗って登場したのは午後7時ちょうど。

 トランプはこの日も、経済の功績から売り込みを始めた。