炸裂するトランプ節

「俺が政権についてから、これまで多くの自動車メーカーをオハイオに誘致した。たくさんのメーカーがやってきたんだ。日本のメーカーや、世界中のメーカーがオハイオにやってきた。彼らはアメリカにきたがっているんだ。アメリカこそが、自動車産業の中心なんだから。オハイオは19年、経済的に見るとこれまでで最高の1年だった」

 そのときどきの経済の好不調は、大統領選挙の行方を大きく左右する国民の最大の関心事だ。

 好景気なら、現職大統領の追い風となり、不景気は逆風となる。アメリカ全体は言うに及ばず、地元の経済も最高だったとトランプは語るのだった。

 つかみはOKだ。

 会場は演説が始まる3時間前に満員札止め。なかには、氷点下の気温の前夜から徹夜して並んだ筋金入りのトランプ支持者もいた。

 トランプの話は、退役軍人の医療問題に移る。日本とは違って、数多くの退役軍人を抱えるアメリカでは、その処遇は大きな政治課題の一つだ。

 トランプは壇上からこうつづけた。

「病気になった退役軍人は、新たに俺が作ったプログラムで、病院を自由に選ぶことができるようになったんだ。退役軍人はこれまで、指定された病院で診察を受けるために何週間も待たなければならなかった。もう40年以上もそんな調子だったんだ。それで俺がいい考えを思いついた。退役軍人は各自で、医者を選んで治療してもらう。それで治療費は、あとから政府が支払うことにする、とね。そしたら役人が言うわけさ。大統領閣下、私たちはもう長年、それを実行しようとしてきましたが、だれも許可してくれなかったんです、ってね。俺が得意なことは、いい考えには迷わず許可を与えることなんだ」

 トランプ節、炸裂である。