今回の大統領選で選挙演説中に銃撃を受けたトランプ氏。写真は銃撃後の共和党全国大会で指名受諾演説をするトランプ氏(写真:REX/アフロ)

トランプ氏が返り咲きを果たすのか——。11月の投票日に向け、選挙戦の様子が連日報じられる米大統領選。その発言にたびたび虚偽や誇張が指摘されるトランプ氏だが、熱狂的な支持者も多い。実態を探るため、ジャーナリストの横田増生氏は2020年の選挙戦でトランプ陣営の選挙事務所に潜入取材を敢行した。ユニクロ、アマゾン、ヤマト運輸など数々の現場に潜入取材を果たした横田氏が、そこで見た光景とは。

(*)本稿は『潜入取材、全手法 調査、記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで』(横田増生著、角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

圧巻だった初めての「生・トランプ」

 初めて生で見たドナルド・トランプは圧巻だった。

 私がトランプの演説を最初に聞いたのは、2020年1月のこと。再選をかけたトランプの共和党の選挙事務所に潜入するため、その1カ月前から中西部にあるミシガン州にアパートを借りていた。

 なぜ、ミシガン州かと言えば、共和党と民主党のどちらにも振れる激戦州であり、16年の大統領選挙においては、トランプが最小僅差で勝利を収めたからだ。この取材は、『「トランプ信者」潜入一年』として上梓した。

 ボランティアに申し込むときに身分証明書代わりに使おうと思っていた免許証を取るのに時間がかかったので、その合間に、トランプの支援者集会を見に行った。隣接するオハイオ州とウィスコンシン州にトランプがやってきたのだ。

 アメリカ政治にかかわる初歩的な事実を確認しておこう。

 アメリカにおいて伝統的な価値観を大切にする保守政党がトランプの率いる共和党で、多様性を追求するのが黒人初の大統領であるオバマを生み出した民主党だ。

 オハイオ州では、「ゴッド・ブレス・ザ・USA」という曲に乗って、トランプはブルーのスーツに、トレードマークである赤のネクタイを締めて壇上に現れた。

 開口一番、大統領就任以来の功績としてアメリカ国内の経済が絶好調であることを強調した。

「経済は成長を続け、賃金は上がり続け、労働者は好景気の成果を享受している。アメリカの将来が、これほど輝いて見えたことはかつてなかった。アメリカは世界から羨望のまなざしで見られているんだ」

 次いで、地元のオハイオ州の景気について言及した。