解雇規制見直しに反対の声、その主張は?
小泉氏の解雇規制見直し案に対し、他の候補はどう発言しているのでしょうか。
河野太郎氏は「会社都合で一方的に解雇された時に金銭補償をするルールを設けるべきだ」と主張しています。金銭補償は欧州などで採用されている制度ですが、こうした小泉・河野両氏の考え方には反対・慎重意見も少なくありません。
高市早苗・経済安保担当大臣は「日本の解雇規制は主要7カ国(G7)で比較しても緩い方だ」と述べ、見直しには反対の姿勢を明確にしています。厚生労働大臣などを務めた加藤信勝氏は「分厚い転職市場を作るのが先。それなくして金銭解決はまだ早い」と言及。議論に着手するのも時期尚早だとの意見です。
また、自民党総裁選と同じ時期に代表選を行っている立憲民主党も、解雇規制の緩和に強く反発しています。代表選に出馬している枝野幸男氏は「昭和の化石みたいな政策。首を切られる人が増え、日本の経済と社会はますますダメになる」と指摘。現代表の泉健太氏も「自民党は経営者目線でしかない。人を大事にしないことが明確になった」と批判しました。
解雇規制は、長い年月にわたる労使交渉や組合活動、社会的な権利意識の拡大、判例の集積などによって、労働者の権利として法律で手厚く保障されるようになってきました。連合やUAゼンセンなど労働組合側も規制緩和には強く反対。人材の流動性を高めたいのであれば、企業側が給与や待遇を引き上げ、有能な人材を率先して集めればいいだけだとの声も出ています。
自民党総裁選で議論はどこまで深まるのでしょうか。9月27日の開票まで目を離せない状況が続きそうです。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。