筆者が20年前に見た人食いバクテリアのひどい症状

 筆者は20年近く前、ある病院の症例検討会という集まりに取材のため定期的に参加していた。

 症例検討会とは、病院内のさまざまな部門から医師など医療従事者が参加し、実際に病院内などで経験されたケースを持ち寄り、互いに病気の実態や診断、治療などについて学び合う会だ。

 だいたい決まった曜日に開催され、1回の症例検討会で提示されるケースはおよそ一つだ。

 そこではさまざまな病気が紹介されるのだが、ある時、提示された病気が「人食いバクテリア」だった。

 原因になるレンサ細菌そのものは何ら珍しいものではなく、よく知っていた。

 例えば、赤ちゃんなど子どもの喉が腫れて痛くなる時に、その病気の原因になる細菌の一つがレンサ球菌だ。溶連菌と略されることも多い。誰しも経験していて不思議のない感染症である。

 ところが、症例検討会で見たものは、驚くべき内容だった。

 提示された写真は悲惨なもので、皮膚が激しく損傷したように見え、外見は大けがを負ったような様子に見えた。