英首相「財政に220億ポンドのブラックホールを発見した」

 階級社会が格差社会に取って代わった英国では貧富の格差は如実に教育の格差に反映される。それが将来の所得格差につながり、格差はさらに増幅して次世代に受け継がれる。それを埋めようと思えばAIの力を借りて「教育の民主化と変革」(カルバーリョ教育長)を起こすしかない。

 口うるさく言ってドリルを繰り返させるより、知的好奇心をくすぐる環境を与えたり、ほめたり、励ましたりした方が効果的だ。1人1年1000万円も払って米国や英国の大学に留学できないなら、オンラインやAIを駆使してバーチャルな学習環境を整えることには大きな意義がある。

 国家や地方自治体の財政が逼迫する中、問題を解決する魔法の杖としてテクノロジーに期待が寄せられる。

 英国のキア・スターマー首相は8月27日、首相官邸の庭園で「事態は想像以上に悪化している。私たちは財政に220億ポンド(約4兆2000億円)のブラックホールを発見した」と強調した。

8月27日、首相官邸の庭にて記者会見を行った英国のスターマー首相。前政権による政権運営を「ブラックホール」と批判し、その穴埋めのため、10月30日に示す予算案は「痛みを伴う」ものになるとして富裕層への増税を示唆した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 英国ではダンスクラスに参加していた3人の少女が17歳の少年に刺殺された7月29日の事件をきっかけに6日間にわたって極右とネオナチの反移民暴動が吹き荒れた。刑務所が満杯なので暴徒は逮捕されない、逮捕されても起訴されないと高をくくっていたとスターマー首相はいう。