「北戴河会議」が開かれたのか

 考えられるのは、8月上旬に開かれた「北戴河(ほくたいが)会議」という中国共産党の非公式、非公開の重要会議だ。

 これは、河北省北戴河の海岸沿いの避暑地で、年に一度、現役幹部と引退した長老たちが一堂に会して開く。期間は通常、3日間である。

 20世紀の前半、北京から東に約300km行った海岸に、イギリス人たちが別荘群を建てた。それを、1949年に建国したいまの共産党政権が接収。水泳が趣味だった毛沢東主席は、毎年夏になると、そこへ泳ぎに来た。

 すると、幹部たちもつらつらと付いてくるようになった。そしていつしか、真夏に非公式の重要会議が開かれるようになったのだ。北戴河会議はその後、何度かの断続があったが、いまも毎年8月上旬に開かれている。

 第一線を退いた長老(元幹部)たちへの「ガス抜きの場」が必要だということだ。年に一度、長老たちを宥(なだ)めておかないと、時間が余るほどある彼らが、あらぬ権力闘争を始めかねない。

 今年の北戴河会議の最大のテーマが、やはり悪化に歯止めがかからない中国経済の復興にあったことは、想像にかたくない。かつ、長老たちは習主席に対し、苦言を呈したことだろう。江沢民時代と胡錦濤時代は、西側諸国との蜜月関係によって、経済成長を謳歌していたからだ。

8月3日、蔡奇共産党中央政治局常務委員・中央書記処書記(前列中央)は習近平総書記の委託を受け、河北省北戴河で夏季休暇中の自然科学やエンジニアリング、社会科学、文化芸術など各分野の専門家らにねぎらいの言葉をかけたという。この前後に非公式の「北戴河会議」が開かれたのだろうか(写真:新華社/共同通信イメージズ)
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