戒厳令説も

 この頃から、「習近平重病説」「北京戒厳令説」など、明らかにフェイクニュースと思われる「怪しげな情報」が、続々と流れ始めた。誰が何の目的で流したのかは不明だが、いまの習近平体制に不満を抱いている中国国内、もしくは海外の勢力が、関係している可能性がある。

 例えば、台湾の有力紙『自由時報』(8月19日付)は、こう報じている。

<習近平が公開の場に姿を現さない間、インターネット上では多くのデマが現れた。昨日(18日)は、北京でクーデターが発生したという情報が出た。それによれば、17日の午後に、中南海で激しい銃撃戦が勃発し、(習近平)総書記とその家族を専門に警護する中央特勤局部隊が、投降を拒絶したため、人民解放軍38軍によって殲滅(せんめつ)させられた。

 また中南海西大門の外では、北京市民が激しい機銃掃射や迫撃砲の音を聞いた。北京全体を戒厳軍が封鎖し、飛行機や列車はすべてストップしている……>

 こうした噂を掻き消すかのように、8月19日、習近平主席が、20日ぶりに公の場に姿を見せた。冒頭述べたように、「社会主義の盟友」ベトナムの新たな指導者・蘇林(トー・ラム)国家主席兼ベトナム共産党書記長が、国賓として訪中。その歓迎式典と首脳会談を、人民大会堂で挙行したのだ。

 CCTV(中国中央広播電視総台)などの報道によれば、習近平主席は、次のように述べた。

「あなたは(ベトナム共産党の)書記長に就任して、一番先に中国を訪問した。そのことは、両党両国の関係を高度に重視していること、および中越関係がハイレベルであり戦略性を持っていることを十分に体現している。

 共同の理想信念は、中越両党が代々受け継いできた紅い遺伝子である。『越中の情や誼(よしみ)が深くて、同志は兄弟に加わる』という伝統的な友誼が凝結したものなのだ。

 世界の二つの共産党が執政する国として、中越両党は友好の初心を保持し、伝統的な友誼を継続させ、共同の使命を胸に刻むのだ。共産党の指導と社会主義制度を堅持し、具体的な戦略的意義を持った中越運命共同体の構築を継続、深化させ、世界の社会主義事業の発展を共同で促進していくのだ。

 私は蘇林(トー・ラム)同志と、良好な仕事関係と個人的な友誼を打ち立て、深く着実に中越運命共同体の構築を、ともにリードしていく所存だ……」

 習近平主席は健在だったではないか!