パリ五輪閉会式に姿を見せたトーマス・バッハIOC会長とフランスのマクロン大統領(写真:新華社/アフロ)
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 フランス時間の8月11日(日本時間8月12日)、パリ夏季オリンピックが、17日間の熱戦に幕を閉じた。393人の日本人選手を含め、世界中から結集した約1万500人のアスリートたちの健闘を称えたい。

 当然ながら、金・銀・銅のメダルを取れた選手、取れなかった選手がいた。だが、オリンピックの創設者であるフランスのピエール・ド・クーベルタン男爵は、「オリンピックで重要なことは、勝つことではなく参加することである」という名言を残している。日々のテレビ中継を観ながら、メダルを取り損ねた選手にも熱い拍手を送ったのは、私だけではあるまい。

パリ五輪の陸上女子やり投げで金メダルを獲得し、表彰式で笑顔の北口榛花(中央)(写真:共同通信社)
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「大会開催中は休戦期間」がそもそもの原則ではなかったか

 だがその一方で、私は日々、歯がゆい思いを禁じ得なかった。

 そもそもクーベルタン男爵が、1896年にギリシャのアテネで第1回オリンピックを始めたのは、古代ギリシャのしきたりを復興させるためだった。それは、4年に一度のオリンピック期間中は、戦争をしないということだ。

フランスの教育者で、「近代オリンピックの父」とも称されるピエール・ド・クーベルタン男爵。立派な口髭と太い腕が印象的だ。五輪マークの考案者としても知られる(写真:Bridgeman Images/アフロ)
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 オリンピック憲章の前文とも言える「オリンピズムの根本原則」の2番目には、こう記されている。

<オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである>

 第2条4項にもこうある。

<スポーツを人類に役立てる努力において、権限を有する公的または私的な組織および行政機関と協力し、その努力により平和を推進する>

 こうしたことから、オリンピックは「平和の祭典」というニックネームで呼ばれているのだ。