IOCのバッハ会長(写真:Lafargue Raphael/ABACA/共同通信イメージズ)

 8月11日夜に閉会式が行われたパリ五輪。閉会式のセレモニーに登場していたトーマス・バッハIOC会長はいつもの精悍さに欠けているようにも見えたが、会長としてこれが最後の閉会式となるのだから感慨もひとしおだったのかもしれない。

 来年6月に任期満了となるバッハ会長はオリンピック最後のスピーチで「夢を与えてくれてありがとう」とアスリートに感謝した。前日のIOC総会においてバッハ会長は任期を延長しない意向を示していた。そうなると来年3月のIOC総会で新会長選挙が行われることになる。

 バッハ会長はこの日のスピーチで、「国同士が戦争で分断されようとも、みなさんは平和の文化を作った。オリンピックは平和の文化を作り、世界を突き動かすことができる」と呼びかけた。最後は「ありがとうパリ、オリンピック万歳」などと締めくくった。

 12年もIOCに君臨してきたバッハ会長には批判の声も多かった。米ワシントンポスト紙は「開催国を搾取する“ぼったくり男爵”」とまで呼ぶほどだった。

 なぜそんなに悪評が高かったのか。それにはIOCの歴史を振り返る必要があるだろう。

貴族や王族が作ったIOC

 IOCは1894年にピエール・ド・クーベルタン男爵とディミトリオス・ヴィケラスによって設立された。歴代の会長と在任期間は以下のようになっている。

1・ ディミトリオス・ヴィケラス(ギリシャ)1894-1896年
2・ピエール・ド・クーベルタン男爵(フランス)1896-1925年
3・アンリ・ド・バイエ=ラトゥール伯爵(ベルギー)1925-1942年
4・ジークフリード・エドストレーム(スウェーデン)1942-1946年代行、1946-1952年
5・エイベリー・ブランデージ(アメリカ)1952-1972年
6・マイケル・モリス・キラニン男爵(アイルランド)1972-1980年
7・フアン・アントニオ・サマランチ侯爵(スペイン)1980-2001年
8・ジャック・ロゲ伯爵(ベルギー)2001-2013年
9・トーマス・バッハ(ドイツ)2013-2025年(予定)

 見れば歴然としているが、歴代会長のほとんどが欧州出身者で占められている。唯一の例外はアメリカ出身の第5代会長ブランデージ氏だけである。