セックスライフで上昇するテストステロン
米国ジョージア州にあるローレンスヴィルのヤーキーズ霊長類研究センターでアカゲザルの「クイド」という名のサルを用いてある実験をした。
それは薬剤を使わずにセックスやその他の行動によって、テストステロンを増加させたり減少させたりすることができるか、というものだった。
この実験は米国ボストン大学メディカルキャンパスのR・M・ローゼ博士の指導のもとで行なわれた。
まずこの猿の「クイド」をほかのサルから隔離し、別の檻に2週間入れて定期的にクイドの血液中のテストステロンの量を検査。
次にクイドを広い屋外に13匹の雌ザルだけを入れてある檻の中にクイドを放す。
13匹の雌ザルの中の何匹かは、そのとき盛(さか)りがついていた。
そこで2週間の間、クイドが天国にいるような素晴らしい時を過ごしたのは言うまでもない。
この夢のような2週間でクイドの血液中のテストステロンは、隔離されていた時の2.5倍まで跳ね上がった。
その後、クイドはまた元の檻に隔離されると、2週間後、彼のテストステロンも元の通りに低下。
もし、テストステロンの水準を高く維持したいのなら、積極的で活発な性的活動が必要ということを、このクイドは実証したのである。
この実験の7週間目に「クイド」はまた別の檻に移された。
この檻には30匹の、団結の強い雄ザルだけのグループが入っていた。
その檻の中に住んでいた雄ザルたちは新参者のクイドに襲撃を開始した。
そのクイドに起こった決定的な雄ザルたちとの負け試合で、テストステロンは彼自身の基準量の半分にも満たない単位にまで低下。
さらにその後、9週間隔離したら、そのレベルは低下する一方で、クイドは重症のテストステロン欠乏症に陥った。
この欠乏症を治すには、テストステロンの注射あるいは経口で与えることも一つの方法だが、その代わりとして、再びクイドを13匹の雌ザルの檻の中に放すことにした。
クイドが雌ザルの檻の中に放されて24時間後、テストステロンの量はすでに顕著な増加を見せた。
雌ザルの中での、思いのままのセックスライフを再び体現した彼は、テストステロンはわずか4日後で前回の時と同じレベルにまで上昇した。
多くの動物の雄は盛りのついた雌を、ただ見るだけでテストステロンのレベルが上昇することが観察されている。
また、性交後のテストステロンのレベルの上昇は、サルだけでなく、うさぎや象や牛にも見られる現象である。
では人間の場合はどうなのか。
ドイツ・ミュンヘンのマックス・プランク精神病理学研究所でK・M・ピルケ博士は、性交、あるいはオルガスムなしの性的関心も、人間のテストステロンの分泌を豊かにすることを、実証実験の結果で明らかにした。
実験は16人の健康な21歳から34歳の男たちを集めて映画を観せるというものだった。
その16人の中から無作為に8人を選んだグループAは、性的刺激の全くないアニメ映画を鑑賞させて、残りの8人のグループBは、性刺激のあるポルノ映画を観せた。
そのポルノ映画の第1話は、2人のカップルがペッティングをして洋服を脱ぐところまで。
第2話は、前戯と正常位の性交、第3話は前戯といろいろな体位の性交という構成である。
この映画が始まる45分前から映画の上映中、そして映画が終わってからの2時間後まで、8人の男たちの腕の静脈に挿入したカテーテルから、15分おきに血液のサンプルを採取。
血液中のテストステロンの量を、映画を見る前、中間、後の段階に分けて検査したのである。
アニメを観て性的刺激を受けなかったグループAの男性たちと、ポルノ映画を観て性刺激を受けたグループBの男性のテストステロン量の比較した結果は・・・。
アニメ映画を観た男性たちのテストステロン量は大きな変化は見られず、ポルノ映画を観た男性たちのテストステロン量は平均35%の上昇が見られた。
テストステロン量は、ビデオが終わっても上昇し続け、終了後60分から90分で最高値となった。
また、ポルノ映画を観た男性は、意欲や競争心が高まり、疲労感が軽減され、性的興奮後、そのリラックス効果とテストステロン値との間にも関連性が認められた。
良質なポルノ鑑賞は、大手の製薬会社で製造された、蛋白同化ホルモンの薬と同じくらい効き目があることが実証されたのである。