「注意? どうすりゃいいんだ?」

 ところが、「注意」が過度に受け取られるの危惧して、あるいは「注意? どうすりゃいいんだ?」という困惑に対して、気象庁は次のような注釈を発表したのである。

 家具の倒壊防止や、防災準備の確認、避難経路確認をすることぐらいでいいです。普段通りの日常行動をするように、旅行をやめる必要はないし、食料の買い占めはしないように、と打ち消しに躍起になったのである。

 だがこんな程度の対応でいいのなら、ふだんの「しばらくは強い揺れに注意」でもよかったのではないか。

 しかし、騒ぎは拡大した。

 NHKは、パリ五輪や甲子園を横目で見ながら、「南海トラフ『巨大地震注意』」のテロップを丸々5日間出しつづけた。

 岸田首相は中央アジアとモンゴルへの外遊を中止した。

 想定震源域沿岸の九州や四国や近畿の自治体が、のほほんとしているわけにはいかない。防災関係、危機管理関係の職員などが緊急招集をうけ、備蓄や避難経路の確認や市民への注意の呼びかけなど、対応に追われた。

 新幹線だけでなく、在来線も影響を受け、減速運転や運休をした。高速自動車道の一部は通行止めになった。飛行機も運休した。想定震源域沿岸の宿泊施設では多くのキャンセルがあった。

 大混乱である。

南海トラフ地震の確率は水増しされている?

 そもそも、今後「30年以内」に「70~80%」の確率で発生するとされる「南海トラフ大地震」の想定に、すべての地震学者たちが賛成しているわけではない。地震学者たちの科学的統一見解でもなんでもないのだ(「巨大地震発生の可能性は?割れる見解 “水の動き”や能登地震に注目する専門家も」広島ホームテレビ、2024.08.10)。

 南海トラフ地震は特別扱いなのだ。「全国の地震と同じ基準で算出すると20%程度だった確率を『水増し』した」(小沢慧一『南海トラフ地震の真実』東京新聞、2023。小沢氏は中日新聞記者。以下同)という。