かれらにとって、「本当のことを口に出して言うことは、自殺行為」である。職業的地位を失うし、研究費を失う。かれらの部下も職を失う。メンツもなくし、今後の予算も失う。謝ることはこれまでの関係者の批判にもなるため「誤りを認めることはしない」。「結局、いつまでも間違った政策が続いていく」。

 結局、なにも起きなかった。

 1週間の「注意」期間ということだったが、1週間経って巨大地震が起こる可能性は下がったのか。もう普段通りの対応をしていればいいのか、についてのきちんとした説明はないまま、あっさりと「注意」が解除された。

「世界でM7級の地震の1週間以内に巨大地震が起きたのは数百回に1回とされ」「決して高い確率ではない」ということはわかっている(『毎日新聞』、2024年8月10日)。

 だが、その「数百回に1回」に当たったら、それを軽く見た連中はどう責任をとれるのか、ということで、危機扇動派から脅されると、みんな黙ってしまう。

 たとえ「注意」や事前措置が空振りに終わったとしても、来なかったからいいじゃないか、ということで押し切られる。

「東京―名古屋間終日運休」でよかったのか?

 同じようなことが15日にも起こった。台風7号が関東に接近する見込みとなり、気象庁は「過去最強クラス」と煽った。

 それにつられて、東海道新幹線は16日終日の東京―名古屋間の計画運休を決め、実際ストップした。

 東京―名古屋間の東海道新幹線というのは、日本列島の最大の動脈と言っていい。しかも、8月16日はお盆期間の終了間際にあたり、移動を予定していた人が多かったはずだ。その大動脈が1日中止まってしまう、ということは、巨大な影響があるというのに。

 しかし今回は空振りだった。新幹線は始発から動かせたのではないか。「終日運休」を前日に決めてしまう必要があったのか。それ以外にいい方策はなかったのか。

 気象庁も、JR東海も、テレビ局も、その点についてはしれっとしている。「責任追及」されるのが怖くて、すくんでいるのだ。

 結果、これも来なかったからいいじゃないか、運転して大混乱になるよりよかったじゃないか、で済ませるのか。