ハイブリッドなど電動化も視野

 オートマティックトランスミッションは4速で、高速道路での巡航時の回転数がかなり高い。燃料タンクのサイズは40リットルで、ちょっと遠乗りになると頻繁な給油を余儀なくされた。

 本来、多段化して高い速度域でのエンジン回転数を抑えたいところだ。

 だが開発担当者は、駆動力を前後車軸に分割するトランスファー機能の位置が大きく変更できないため、オートマティックトランスミッションの全長が伸びるギアの多段化は難しいとの見解を示した。

 では、次世代ジムニーのパワートレインはどうなるのか?

 スズキが7月に都内で実施した、次世代技術に関する報道陣向け説明会では、新開発の48Vマイルドハイブリッドの試作エンジンが初公開された。その前でパワートレイン開発統括者は「本格四輪駆動車のジムニーも、さすがに電動化に対応する必要がある」と指摘した。

2024年7月に実施された、スズキの次世代技術説明会で展示された48Vマイルドハイブリッドの試作エンジン(写真:筆者撮影)

 その上で、従来のようなドライブシャフトを持つFR(フロントエンジン・後輪駆動)を維持して電動化するのか、またはFF(フロントエンジン・前輪駆動)としてリアモーターによる四駆とするのかなど、量産に向けて様々な可能性を検討しているところだという。

 スズキは2030年代に向けて、既存の軽量プラットフォーム(車体)を活用した電動化を進めると同時に、BEV(電気自動車)専用のプラットフォームを加える。次期ジムニーがいきなりBEVになることは想像しがたいが、なんらかのかたちで電動化した四駆システムを搭載することは間違いなさそうだ。

 広い世代で、実用から趣味の領域まで幅広く支持されているジムニー。次世代に向けた進化がどのような形となるのか、いまからとても楽しみだ。

桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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