反奴隷制を訴えたかつての共和党は“トランプ党”に

 もっとも、当時の民主党政権でも、企業の経済活動に本格的・恒久的に介入する産業政策には否定的でした。あくまで米国版の「大きい政府」と考えた方がよさそうです。

 これ以降、20世紀の公民権運動など、黒人の権利向上に積極的だったのも民主党です。

 一方、かつてリンカーンを産んだ反奴隷制の共和党は、個人主義で自由競争を良しとする「小さな政府」の党となりました。弱肉強食的な19世紀の価値観をある意味受け継いで今日に至り、トランプ大統領を輩出しています。(続く)

山中俊之(やまなか・としゆき)
著述家/芸術文化観光専門職大学教授

 1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。
 2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。
 著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。